各種産業排水中には、界面活性剤類、水溶性高分子類、含窒素有機溶媒などの多種高濃度の難分解性物質が含まれており、従来の手法による生物処理や活性炭吸着では、十分な処理が行なわれることなく、処理水中に流出してしまう場合がある。本研究では、処理困難物質を高濃度に含有する排水を排出する業種として、金属機械加工工業および化学工業に取り上げて検討を行なってきた。代表的な金属機械加工工業である自動車工業と自動車部品工業に対して排水の発生状況すなわち発生原単位、処理困難物質等と、処理状況すなわち処理プロセス、処理水質および処理コストについてのアンケートを行い、関連する多くの情報が得られている。処理困難物質として、難燃性作動油、金属表面処理液、水溶性塗料等が挙げられ、CODの低減がさらに必要であることが明らかになった。製品単位生産量当りの排水発生量についての情報も得られた。 有機性産業排水の処理には活性汚泥法を中心とした生物処理が一般的に利用されているので、難燃性作動油の主成分であるアルキレングリコール、グルコン酸ナトリウムの化学酸化(フェントン酸化)による生物処理性の向上を実験的に検討するとともに、化学工場から排出される難分解物質であるジメチルホルムアミドやアクリトニトリルが生物排水処理装置に流入したときの装置内微生物相の変化を、キノンプロファイル法を利用して解析し、それら難分解性物質が流入したときの馴致期間をできるだけ短縮できる最適な操作条件を確立するため知見が多数得られている。これらの情報を総合的に解析し、排水の発生源と排水の組成を明かにし、排水発生量を削減するとともに、それでも排出される排水の最適な処理システムおよび運転条件を確立することができる。
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