研究概要 |
本研究では,市場における消費者の品質向上期待について,その構造を明らかにすることを目的としている。そのために,いくつかの耐久消費財に対し,具体的に消費者はどのような品質向上の期待を持っているのか,その期待項目を調査し,さらにそれらの項目を整理して各項目に対する期待の程度を調査し因子分析を行った。その結果,市場の評価の観点として,各製品にほぼ共通する10因子が得られ,製品によって異なるのはそれらのウエイトであることを示した。これらの因子を用いることによって,製品に対する品質向上の期待と消費者属性,および企業が供給する製品品質との関係を明らかにすることができた。そこから,製品品質に対する市場の評価の観点である評価因子は,内容的には時間変化にも安定したものであること,また,調査年による期待の上昇傾向が認められるが,これは新しい品質機能を持つ製品が市場に出現し,それが市場に普及する過程でその製品の未使用者の対応する評価因子の期待が相対的に増大することに起因するなどの結論が得られた。さらに,本研究では,企業の従業員の期待に関しても,彼らの深層において知覚される因子が存在していることを実験的に明らかにしている。このような消費者の期待と従業員の期待に関する二つの因子相互間の関連に基づいて,本研究では耐久消費財に限定されるが消費者にとって魅力的な製品を設計することと,従業員の満足に対して適切な作業条件や作業環境を設計することについて,一元的な方針設定に関する一つの方法を提示した。
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