本年度は、昨年度に構築された“GVI(グローバル植生指数)データ解析ネットワークシステム"を利用して、主に、次の課題について検討した。 (1)グローバル植生指数データの経年変化 (2)植生変化と人口増加との関連性 (1)に関して次のような成果が得られた。 1983年から1988年までの月間GVIデータから年平均GVIデータを作成した後、国境データでマスクされた年平均GVIデータを使って全世界の陸域における年平均GVI値の変化を調べた。その結果、世界的に幾分GVI値は上昇していることが分かった。このことは、世界の植生度は年々減少しているということを示唆していると考えられる。 また、(2)に関しては、次のような結果が得られた。 人間活動の指標として各国の人口を取り上げた。これは、人口が増加すれば、そのための経済活動(国土開発)が刺激され、間接的ではあるが植生の減少につながると考えられるからである。国別年平均GVIデータの年変動と国別人口の年変動について相関分析を行った。103カ国について、国別の植生変動と人口増減との相関係数をし、危険率10%で相関があると認められる国(限界値0.736)を抽出した。正の相関が認められるという国を世界地図として表示できた。相関が高い国は、中央アメリカ、南アメリカ、中央アフリカ、東南アジアの地域に集中していることがわかった。これらの地域は、一般的に考えられているように、国土開発や森林伐採が問題とされている南米地域、木材資源の輸出を行っている東南アジア地域、砂漠化が進行していると思われているアフリカに対応している。 それらの国についてはFAOによって提供されている耕地面積と森林面積の変化についても考察した結果、これらの国では、事実森林が減少しており、かつ、GVI値と人口増との強い相関を考慮すると、間接的ではあるが人間活動の指標として取り上げた人口増と植生変動とは無関係ではないことが示された。
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