発生過程における組織構築において、細胞表面分子は細胞間相互作用の足場である。我々がニワトリ胚脊髄の粗膜分画からショットガン方式で得たモノクローナル抗体により見いだしたSC1分子は、発生過程に一過性に運動ニューロンの細胞表面に発現される分子量約10万の糖蛋白である。この分子のcDNAをクローニング・シークエンスした結果、免疫グロブリンファミリーに属するこれまで未知の新しい蛋白であり、同じ分子同士がホモフィリックに反応する細胞接着分子である事を明らかにしてきた。細胞接着分子の活性は、細胞培養下では極めて明確であるが、その体内での役割は必ずしも明確ではない。 この研究計画では、SC1の神経系形成における機能解析を行うため三川隆博士(コーネル大学)によって開発されたspleen necrosis virus由来のレトロウイルス発現ベクターにSC1cDNAを組み込み、ウイルスを産製する細胞株を樹立した。次に、そのウイルスをウズラ胚神経管内に注入し、本来SC1を発現しない脊髄介在ニューロンにSC1を強制発現させた場合、その軸索成長がどの様に変化するのか、特に、運動ニューロンと一緒に脊髄から伸び出さないかを調べている。
|