細胞膜の微小ドメイン構造が膜タンパク質の運動領域を制限する機構を解明するため、細胞膜上のトランスフェリン受容体のナノメートルレベルの運動を金コロイド(40nm)を標識とする一粒子追跡法で測定した。また、受容体を金コロイドやラテックス(210nm)の微粒子を介したレーザー光トラップで操作し、その応答を解析した。 細胞骨格系を薬剤処理で破壊した細胞を用いた測定から、細胞骨格系タンパク質で構成された細胞膜裏打ち構造が受容体の運動を制御していることを示唆する結果を得た。 細胞骨格系の膜裏打ち構造と、被覆ピット裏打ち構造であるアダプター複合体の関係を調べるため、受容体の野生型、アダプター結合部位の点変異体、細胞質部分の欠失型を強制発現させた細胞を用いて、受容体の運動と光トラップに対する応答を解析した。この細胞では、野生型分子のほとんどが形成途中のやや不安定な被覆構造に入っていることを示唆する結果を得た。串変異体についても、細胞膜裏打ち構造との相互作用が起こっているらしいことが分かった。欠失型は、細胞質側からの運動制御を受けないが、細胞外に拡散運動を遅くする要因が存在することが示された。
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