研究課題
細胞内で自己のタンパク質をバルクに分解する自食作用(autophagy)は真核細胞に普遍的に見られる重要な生理機能である。この過程は外部α栄養源飢餓シグナルの認識、その伝達、オートファゴソームの形成、オートファゴソームと液胞膜の相互認識、膜融合、オートファジィクボディの分解など、複雑かつ高度に制御された素過程からなることが想定される。本研究は自食作用の機構解明に初めて遺伝学的アプローチを行ったものである。我々は酵母液胞が活発な自食作用を行い、タンパク分解を阻害することにより、オートファジィックボディの蓄積として光学顕微鏡で検出来ることを示した。この酵母の系の利点を生かし、窒素飢餓条件下に液胞内にオートファジィクボディを蓄積しない変異株を分離し、apg1株を得た。この株は飢餓によって誘導されるタンパク質分解が認められず、ホモの二倍体は胞子形成不能であった。またapg1株は窒素飢餓培地中で急激にその生存率が低下した。この形質を一次スクリーニングに用いることにより、さらに多数の自食作用不能株(apg)を分離した。遺伝学的な解析の結果、それらはいずれも核性の劣性変異であり、15個の相補性群に分かれた。apg1-15株は全て飢餓によって誘導される液胞内タンパク分解が起こらなかった。これらの株は栄養増殖は正常であり、液胞の形態、生理活性には異常がないことから自食作用に特異的遺伝子群であることが予想される。現在APG1遺伝子をクローニングし、その構造解析を進めている。オートファジィックボディを蓄積した液胞を単離し、その生化学的な解析により、この分解系の非選択性を明らかにした。また自食作用に関与する膜系の分解条件を検討しその成分の同定が進みつつある。
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