微小管結合蛋白質(MAP)を介した細胞質からのDNA複製制御

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04833005
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 塩田 正樹 東京大学, 医学部(医), 助手 (80134526)
• キーワード: 微小管結合蛋白質 / MAP4 / リン酸化 / 微小管重合促進部位 / DNAポリメラーゼアルファ / DNA複製 / ヒーラ細胞 / 核

研究概要

ウシ微小管結合蛋白質(MAP)4遺伝子の種々の断片を大腸菌内で発現させ、MAP4蛋白質の種々の断片を調製した。これらの蛋白質断片にプロテインキナーゼCを作用させ、リン酸化することにより特定の部位がリン酸化されたMAP4蛋白質及びその断片を得た。こうして得られたリン酸化MAPを用いてMAPのリン酸化とDNA合成促進作用(DNAポリメラーゼ アルファ活性の促進効果で調べた)との関係を解析した。その結果、DNAポリメラーゼ アルファ活性を促進するためにはMAP4のN末端側に存在する微小管重合促進部位と隣接するプロリンに富む領域が必須で、これらの領域のリン酸化の程度の高い程、その効果が高いことが明らかになった。この結果は、細胞質の微小管に結合したMAPがこの領域のリン酸化によって微小管より解離するという一般の見解と表裏の関係をなした。このことから、リン酸化を介して微小管のMAPが細胞質より核に移行しDNA複製を促進するという調節機構の存在が示唆された。
また、通常、MAPは細胞増殖の不活発な細胞の細胞質に存在するが、本研究ではMAP4抗体を用いてMAP4がヒーラ細胞等の増殖のさかんな細胞の核にも存在することを見いだし、MAPによるDNA複製制御の可能性を支持した。

研究成果

• [文献書誌] Shioda,M.: "Modulation of DNA synthesis by microtubule-associated protein-2 in the nuclear matrix isolated from Physarum polycephalum" Biochemistry and Molecular Biology International. 31. 905-910 (1993)
• [文献書誌] Okuhara,K.: "Initiation of DNA synthesis in a high molecular weight fraction of Xenopus egg extract" Cell Biology International. 17. 275-282 (1993)
• [文献書誌] Takahashi,Y.: "Isolation of a new species of Physarum lysophosphatidic acid,PHYLPA,and its effect on DNA polymerase activity" Cell Structure and Function. 18. 135-138 (1993)
• [文献書誌] Murakami-Murofushi,K.: "Inhibition of cell proliferation by a unique lysophosphatidic acid,PHYLPA,isolated from Physarum polycephalum" Cell Structure and Function. 18. 363-370 (1993)