研究概要 |
PEBP2αはDNA結合能、βサブユニットのダイマー形成能を有するrunt domainを機能領域に持つ新しい転写因子ファミリーを形成している。現在までにT細胞株、またマウス組織では胸腺に強く発現が見られるPEBP2αA、ヒト急性白血病関連遺伝子AML1のマウスホモログPEBP2αB、さらに神経系での遺伝子転座による発がんへの関与が示唆されるαC cDNAが単離されている。一方、βサブユニットは現在までに一種類のみ同定されており、mRNAの発現は調べた限りの細胞株で普遍的である。PEBP2αはαA,αB,αC間でそれぞれ異なった細胞種特異性を示し、ファミリー間での機能を多様化している。本年度は、これらPEBP2αのなかでも分子種レベルでの解析が最も進展しているαAを用い、細胞腫特異的発現のメカニズムを解析することを目的に各分子種のmRNAの発現を解析した。αA遺伝子において、すでに単離されている分子種(αA1,αA2,αA3)のmRNAの発現をノーザン法あるいはRT-PCR法により解析した結果、αA1,αA3mRNAの発現は調べた細胞種においてはT細胞特異的であったが、αA2は普遍的であった。この事実はスプライシングの差異にて生じる同一遺伝子由来の異なる分子種において、その発現が異なる制御を受けている事を示唆している。今後は、これらの同一遺伝子内に見られる発現の特異性の生理的意義を含め、そられの発現調節機構に関してもさらに検討を続けていきたい。また、他のrunt関連マウス遺伝子であるPEBP2αB(B1、B2)、αCについても新たな分子種の同定を試みるとともにその発現を調べることでファミリー全体の機能的連関を解析し、各々の細胞種、あるいは組織特異的発現が、白血病発症や広く細胞の分化に対してどのように関わっているのかを明らかにしていきたい。
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