1、高温感受性コフィリン変異株の非許容温度での増殖を回復させることを指標にして、出芽酵母のマルチコピー遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、高温感受性コフィリンのマルチコピーサプレッサーSCF1を得た。SCF1遺伝子は、コフィリン遺伝子の欠失を相補することはできなかった。 2、SCF1遺伝子破壊株の四分子解析の結果、SCF1遺伝子は酵母細胞の増殖に必須ではなかった。 SCF1遺伝子の塩基配列を決定したところ、615アミノ酸からなる蛋白質をコードしている、今までに報告されていない新規な遺伝子であった。Scf1蛋白質のアミノ酸配列には、三量体G蛋白質ファミリーのβ-サブユニットに存在している繰り返し配列が三カ所と、出芽酵母の分泌系に関与しているGDP-GTP交換反応促進因子であるSec12蛋白質の一部分、および、分裂酵母のRas関連蛋白質であるYpt1蛋白質の一部分のそれぞれと部分的なホモロジーを示す配列が見い出された。 4、C端に6個のヒスチジン残基からなるタグを付けたScf1蛋白質を大腸菌に合成させ、Ni-NTAレジンを用いてアフィニィティー精製し、ウサギに免疫してScf1蛋白質に対する特異抗体を得た。現在、この抗体を用いてScf1蛋白質の酵母細胞内での局在や、コフィリン、アクチンとの相互作用の有無を検討している。
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