1、大腸菌から精製した組替え型出芽酵母コフィリン蛋白質は、アクチンに対して、高等動物のコフィリンと同様の作用を示した。さらに、ブタのコフィリンのcDNAは、出芽酵母のコフィリン遺伝子COF1の欠損を相補したことから、コフィリンの機能は、酵母から高等動物までよく保存されていることが分かった。 2、COF1を組み込んだプラスミドを突然変異誘起剤で処理し、高温感受性変異体を4種得た。それらの遺伝子は、全て、in vitroでの解析から、アクチンおよびポリホスホイノシチドとの結合部位であると同定されているドデカペプチドの部分にアミノ酸の変異が生じていた。つぎに、染色体上の野生型コフィリン遺伝子を高温感受性コフィリン遺伝子で置き換えた酵母変異株を作製した。この変異株は、増殖が高温感受性であり、高温ヘシフトすると、小さな芽を出した細胞の割合が高くなりその後細胞が溶解した。これらの結果は、コフィリンとアクチン、ポリホスホイノシチドとの相互作用が、酵母細胞の増殖にとって実際に重要であることを示している。 3、野生株の酵母細胞をコフィリンに対する特異抗体で蛍光抗体染色したところ、出芽部位のアクチンパッチと呼ばれるアクチン繊維が密に集まった構造が染色された。高温感受性変異株を高温にシフトすると、アクチンパッチは消失し、細胞質にアクチン繊維の太い束が形成された。これらの結果は、コフィリンはアクチンとともに出芽部位における芽の成長に関与していることを示唆している。 4、高温感受性コフィリン変異株の高温での増殖を回復させることを指標にして、出芽酵母の遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、高温感受性コフィリンのマルチコピーサプレッサーSCF1を得た。この遺伝子は、今までに報告されていない新規な遺伝子であった。現在、この遺伝子の産物の同定と解析を進めている。
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