研究概要 |
(1)ソ連が91年末に崩壊したので,その後継者であるロシア連邦に焦点を定めて,環境保全型市場経済化の初期条件を産業構造とその双対体系である価格構造に関して明らかにすることを試みた。利用した基本資料は未公刊の1989年・1990年ロシア連邦産業連関表である。また,国際的連関の中で問題を考察するために,貿易構造と貿易価格とにリンクさせて産業構造と価格構造を分析した。さらに,ロシアと旧ソ連以外の第3国との貿易ばかりでなく,ロシアと旧ソ連構成共和国との貿易問題にもメスを入れた。部門別国内(域内)価格と部門別国際(貿易)価格との連関をはじめて明らかにすることに成巧した。さらに,国際競争を無視して合現的価格体系を算定する場合と,国際競争力を考慮した価格体系との間に一定のトレードオフ関係がみられることを明らかにした。 (2)新生ロシアの第1年度目にあたる1992年の経済状況を貿易構造について詳細に調べ,外需依存,輸入依存の度合がいかに高っているか,対外債務返済の決め手の1つになるドル建貿易収支ならびに貿易収入がいかなる状況にあるかを利用可能な統計をすべて検討する中で調査した。一般物価上昇とそれを上回るハイスピードのルーブル安進行の状況もこうした考察の一部に位置づけて行った。 (3)旧ソ連諸国間取引のハードカレンシー決済の可能性をヨーロッパの戦後の支払同盟等の経験も考慮に入れて分析した。 (4)旧ソ連・東欧への西側からの資源移転の可能性を計量的に分析するための準備作業を行った。この場合,先進工業国,途上国,旧ソ連・東欧(東ドイツを除く)という3者連関の中で問題を考察した。また計量モデルは先進国,途上国のみに適用し,旧ソ連・東欧については定性分析の積み上げによって必要資金移転額,キャピタルフローの総額を明らかにするようにし,この結果を計量モデル分析と突き合わせ,調整した。
|