「東アジア経済圏」のモデル分析では、ASEAN、アジアNIEs、日本、それにアメリカを加えた多国間リンクモデルを作成し、東アジア経済圏の関税その他の貿易障壁を撤廃したときの経済効果、すなわち貿易創出効果と貿易転換効果を具体的に数値で計算し、評価しようと考えた。この作業には、(1)データーの収集、(2)各国マクロ計量モデルの作成、(3)貿易サブリンクモデルの作成、(4)シナリオの設定、(5)シュミレーション、(6)結果の評価、(7)研究成果のまとめという課程がある。先ず、ASEANモデルの一部(このうちマレーシアモデルは独立した論文として発表済み)、日本モデル、アメリカモデル、貿易サブリンクモデルを作成して、シミュレーションを行った。残された課題は、アジアNIEsモデルを付け加え、貿易リンクをより詳細に、かつ投資を含めた形にすることである。 本年度1月からは、新しい視点で「東アジア経済圏」の分析を始めた。Kreinin&Plummer(K-P)の"Natural Economic Bloc:An Alternetive Formulation"という論文に接し、これを批判、拡張することで「東アジア経済圏」の問題をうまく分析できると考えたからである。K-Pは、顕示比較優位指数を使って各国の比較優位構造が、そのランキングでみて、対世界と対地域との差があまりなければ、新しい経済圏は非常に有望と議論した。これだけでは不充分で、貿易構造の変化を直接的に導入すべきと考え、600品目以上についての構造の相違を検討し、論文にまとめている途上である。3月末日を目標とし、論文はアメリカの雑誌に投稿する予定である。上記の研究は、いずれも、大量のデータを加工、計算するもので東芝製ラップトップパソコンと数値計算用ソフトを全面的に利用した。
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