92年度は理論モデルの構築を行なったが、93年度は理論にもとづき、実証研究を行なった。実証研究においては、原油の探査・開発、原油埋蔵量、生産の間に一定の関係が成立して、これが、石油企業の企業価値に関連づけられることが予想された。1980年代のアメリカ企業のデータでこれを実証しようとしたところ、いくつかの推定式は、いずれも当初の予想と異なる結果をもたらした。そこでの問題を検討すると、企業価値が、企業の組織構造や1980年代の企業合併などのリストラクチュアリングと密接に関係するためであることが判明した。このため、研究を二分して、第一の論文では、企業の垂直統合と企業価値の関係を明らかにした。これによれば、原油価格規制下での垂直的統合の程度は、高い企業価値と相関すること、したがって、垂直統合の進んだ会社ほど原油の探査・開発活動を積極的に行なったことが示された。第一論文の一部は、理論・計量学会1993年10月の大会で発表した。第二の論文では、1980年代のリストラクチュアリングが企業価値と密接な関係にあることを実証した。この二つの論文は経済学の専門誌に現在投稿中である。 今年度の実証研究において、旧ソビエト連邦の原油生産に関して同様の実証調査を行なうことを予定していた。そこでは、企業価値に代わって、キャシュ・フローに相当する変数を用いて、探査・開発の効率性を評価する予定であった。しかしながら、ソビエト連邦の崩壊によって、逆に、データそのものの信馮性が低くなったと断定せざるを得なくなった。したがって、集計的なデータによって、極めて定性的な分析で満足をせざるを得なかった。この研究は現在も続行中である。
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