本研究は伝統的な国際貿易の基本的な仮定を緩め、不完全競争、規模に関する収穫増大(ないし減少)といった現実的な諸要因を考慮してその再構築をはかることを目的とするものであった。平成5年度までの研究では、Ricardo-Mill流の2国2財1要素モデルとHeckscher=Ohlin流の2国2財2要素モデルを再定式化し、伝統的な国際分業や貿易利益の理論がいかに修正されるか、あるいはいかなる条件の下で有効とされるかを検討した。本年度は本研究の最終年度に当たり、これまでの成果のひとつのまとめとして、「不完全競争下の国際貿易と貿易利益」と題する論文の草稿(未発表)を作成した。また、政策目的と政策手段の関係を問ういわゆる「最適政策の理論」が交易条件が内生的に決定されるモデルにおいていかに修正されるかを分析し、公刊した。これは不完全競争下での最適政策の理論への準備的作業となるものである。本研究のもうひとつの目的は部分均衡モデルによって一般均衡分析では直ちには扱いにくい新しい問題を提起することであった。これまでの成果に加えて、本年度は国際的な寡占の下で技術革新がいかに遂行されるか、またその結果として企業や国家の栄枯盛衰がいかにして生じるかという問題を考察した。その成果はR.Jones教授(米国ロチェスター大学)との共同論文として近く公刊される予定である。
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