研究概要 |
松村は,国民経済・国際経済・世界経済という概念の学説史的な検討から開始し,これらの概念が普遍的意味と特殊歴史的意義を併せ持っていることを解明した。次に,戦後における生産の国際化について,まず原産地規則をめぐる理論的問題に取り組んだ。特にこれと「国産」ということとの接点を考察し,その異同について理論的分析を行った。つまりローカル・コンテントは現地での生産を意味し,この比率の増大は「国際化率の高度化」といえないこともない。しかし,外国多国籍企業が自国の部品メーカーを導入した場合や地域的自由貿易協定加盟国内からの調達,さらに複数国に跨って生産される製品の場合に適用される累積原産地規定をもローカル・コンテントと認定した場合などは単純な国産化の深化とはいえず,正しくは「生産の域内化」というべきである。 藤川は「国産化率」という用語の整理から始めた。国産化比率には二つの意味がある。一つは需要者が財を手にする段階での輸入品比率であり,もう一つは国内の生産者が生産段階でどの程度の輸入品を使用するかである。ローカルコンテンツとは国産品の後者のとらえ方である。ここでは,前者の国産化率を需要国産化率,後者を抜術的国産化率と呼ぶことにしたい。しかし国産品の原料も製造過程では輸入品が混入しており,製造の最終段階で国産化比率を見ることは過大評価となる。この様に中間財の国産化率をも考慮した係数を総合付加価値係数と呼ぶ。次に.これらの異なった国産化率概念を共通の産業分類で産業関連表データが得られる日,米,英,独,仏の5か国について実際に試算した。技術的国産化率は米国では高く,日本がそれに次ぎ,欧州諸国は高くなく相互依存的である。しかし中間財を考慮すると日本は高くなるので海外依存度が非常に低いとは言えない。
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