平成4年度は低温変形実験用の装置開発を主に行った。また予備実験として旧型の装置を用いてH_2O-多結晶氷の力学変形実験も行った。まず装置開発についてであるが、低温度で長期間実験を行うためにヘリウムガス圧縮型の極低温冷凍機(平成4年度申請)を購入した。この形式の冷凍機は最低温度で10Kまで達し、その温度で連続冷却運転できるのでクリープ、緩和実験などの1日から数日かかる変形実験でも容易に行うことができる。この冷凍機を中心に真空チャンバー、変形試験機から今回の低温変形実験装置は成り立っている。真空チャンバーは試料の断熱(冷却効率を上げる)と空気の混入を防ぐために10^<-6>torrまで内圧を下げることができる。試料は冷凍機の先端に取り付けられた冷却板から熱伝導により冷やされる。温度調節はこの冷却板に巻き付けられたヒーターを加熱することにより行う。設定可能温度は40K-263Kであり、±1℃の温度幅で試料温度を制御することができる。変形実験は二重円筒回転式変形実験装置を用いて行う。最大回転速度は1.5rps、最大トルクは10Nmまでの条件で定歪速度、定荷重、周期振動型の実験が可能である。 以上のような低温変形実験装置を現在開発準備している。固体メタン・固体アンモニア試料の作製に関しては、冷却板にセットされた治具中に一次冷却装置(冷媒、液体窒素)で冷却・液化したメタンまたはアンモニアを流し込むことにより凍結成長させて試料を作る装置を設計し現在製作中である。 予備実験として行ったH_2O氷の低温下での力学的緩和実験では、-10〜-70℃での氷の緩和時間の温度依存性と応力依存性を見つけだすことに成功した。それによると氷の緩和時間は温度が-60℃以上では応力の3から4乗に比例し、また応力が一定の場合は温度の低下とともにこの緩和時間が急速に長くなる(30℃低くなると30〜40倍長くなる)ことが明らかになった。
|