最近、隕石中にアルミナが存在し、Al^<26>やO^<16>の原始太陽系形成時の情報が含まれていることがわかり、再び非平衡凝縮論が脚光を浴びている。非平衡凝縮論ではスピネル(MgAl_2O_4)の生成はAl_2O_3固体のMgOとの反応で起こると考えられている。これを実践することを目的として、我々の発展させてきた超微粒子と薄膜の反応を使って、拡散過程を通しての物質合成法を試み、600℃という低い温度でスピネルが生成することを明らかにした。アルミニウム蒸着膜を酸化して生成するアルミナ膜上にMgやMgO超微粒子を乗せて生成させるAl_2O_3膜-Mg超微粒子、Al_2O_3膜-MgO超微粒子および逆のMgO膜-Al超微粒子の反応によってスピネル(MgAl_2O_4)が生成することを電子顕微鏡法によって示した。この系の場合、エンスタタイト(MgSiO_3)の場合と異なって、いずれの組み合わせの場合でもマグネシウム原子のアルミナ膜あるいはアルミニウム粒子への拡散で起こることが明らかになった。特にアルミニウム粒子のスピネル化にともなって粒子がポーラスになることを初めて見いだし、その生成機構について明らかにした。 一方、金属のアルミニウム煙を使ってアルミナ粒子を作る全く新しい方法を確立した。この方法では金属アルミニウム粒子が瞬時にガンマアルミナに変化した。その粒子の赤外吸収スペクトルを測定し、γ-Al_2O_3粒子に特長的な13μmの吸収ピークを観察すると同時に、非常にガスなどの吸着性が良いことによるものに起因しているような吸収ピークが試料の調整過程でおこることを明らかにした。主にOH系統のアルミナ超微粒子表面への吸着であることを確認した。 今回発展させてきた方法は惑星科学分野の研究に多々応用できることが明確になり、今後のこの方面への展開の基礎の確立ができた。
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