地球上層大気中で採集されている"宇宙塵"の形状からの類推によって、惑星間空間に存在する塵は不規則かつ不均質であると予想されている。我々は、惑星間塵の不規則形状を定義する手段として、フラクタル表示が有効であると考えた。これを示すために、衝突合体で形成される集合塵を数値シミュレーションで形成し、その形状・構造が、"宇宙塵"に類似することを示した。その後、フラクタル塵モデルに基づいて、惑星間塵の光散乱、熱放射特性を明かにし、従来の塵の球近似モデルとの比較検討を行なった。以下に、本年度の主な研究実績をまとめる。 (1)計算機シミュレーションによって、塵が基本粒子の衝突合体によって成長する過程を再現した。種々の条件の下で形成された集合塵の不規則形状・内部構造を、フラクタル次元で表し、成長過程の違いを反映した、塵の形状・内部構造が生まれることを明らかにした。塵の成長環境(基本粒子の密度、温度等)や、衝突合体過程における諸因子(付着係数、結合力等)が結果として生まれた合体塵の形状に与える影響を、定量的に示した。 (2)フラクタルダストと電磁波との相互作用係数を求めるために、我々が開発した、簡易計算法^<(*)>を改良し、広く用いられているDDA法(Discrete Dipole Approximation)との比較検討を行なった。その結果として、太陽放射圧の大きさが、塵の構造によって、大きく影響されることが分かった。 ^<(*)>不規則形状塵を、仮想真空媒質で覆った球で近似して、平均誘電率を持った仮想球による電磁波相互作用をミー理論を用いて計算する。 (3)惑星間塵の運動を、太陽散乱光のドップラーシフトの観測から求めるための理論手法を提案した。これは、従来謎とされていた、観測結果の予盾を解き明かすものであった。この検討過程において、惑星間不規則塵の構造変化が重要な役割を果たすことが分かった。
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