近年の観測技術の向上によってTタウリ型星には、幾何学的に薄くてほぼ100AU程度の大きさの円盤の存在が強く示唆されている。この円盤は惑星形成の母体である原始惑星系円盤であると注目されている。しかし、この円盤の構造や進化は充分に解明されていない。このため本申請研究では、原始惑星系円盤モデルを構築して、その安定性及び進化を摂動計算と数値シミュレーションによって解析することを目的しした。 まず、原始惑星系の安定性については線形解析による解析を実行した。無限に薄い円盤近似の元に、回転則と温度分布を中心星からの距離の巾関数と仮定して重力的に平衡な円盤を用意した。この非摂動解に対して、成長率に対する2階の積分・微分固有値方程式を行列法によって解いた。この結果、安定性は、円盤の局所的安定性のパラメータであるToomreのQ値の円盤内での最小値(Qmin)によって判断されることがわかった。 線形解析の結果を知って、次に問題となるのは不安定円盤の最終状態である。つまり、不安定円盤はいかに進化するかという問題である。このため、まず円盤の厚さ方向の構造や運動は無視することにして無限に薄い円盤場合に、その進化を数値シミュレーションによって分析した。状態方程式はポリトロープを仮定してその指数はN=3/2とした。結果は、円盤の質量Mdと中心星M_<(] SY.sun [)>の質量の比であるq(=Md/M_<(] SY.sun [)>)によって分類された。特にq=1の場合は、極めて不安定で初期からm=8程度の非軸対称モードが急速に成長し、それぞれの腕は数個に分裂する。最終的には十数個の分列片に分かれる。それぞれの質量は、円盤の質量を1M_<(] SY.sun [)>とすると、褐色矮星の質量程度となる。 以上の研究によって、原始惑星系円盤の自己重力的安定性についての限界がはじめて定量的に明らかにすることができた。現在その結果を論文にまとめている。
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