近年の観測技術の向上によってTタウリ型星には、幾何学的に薄い円盤の存在が強く示唆されている。この円盤は惑星形成の母体である原始惑星系円盤であると考えられている。しかし、この円盤の構造や進化は充分に解明されていない。このため本申請研究では、原始惑星系円盤モデルを構築して、その安定性及び進化を摂動計算と数値シミュレーションによって解析することを目的とした。 まず、原始惑星系円盤の安定性については、線形解析による解析を実行した。この結果、安定性は、ToomreのQ値(局所的重力安定性のパラメータ)の円盤内での最小値(Qmin)によって判断されることがわかった。Qminが1より小さい円盤は不安定で、その成長率は回転角速度の程度に大きくため、この不安定性は自己重力的不安定性と解釈される。一方Qminが1より大きい円盤もやはり不安定であった。その成長率が小さい点や固有関数の形から判断して、差動回転系特有の不安定性であると推測された。 線形解析より円盤が不安定であることがわかると、次に問題となるのは不安定円盤の最終状態である。無限に薄い円盤の場合に、その進化を数値シミュレーションによって解析した。結果は、線形解析で重力不安定な円盤は、十数個の分裂片に分かれ、それぞれの質量は、円盤の質量を1とすると、褐色矮星の質量程度となることが示された。一方、差動回転系の不安定を持つ円盤は、非軸対象モードの成長が見られたが、円盤の分裂にまでは至らないことが示された。 以上の研究によって、原始惑星系円盤の自己重力的安定性についての限界がはじめて定量的に明らかにすることができた。
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