研究概要 |
1.サルを用いた海馬体領域の慢性脳梗塞モデルの開発 開頭による方法では侵襲が大きく術後死亡率が高いので、血管内手術法による慢性脳梗塞モデル作製を試みた。大腿動脈よりトラッカー(血管内手術用カテーテル)を挿入し、内頸動脈経由で後大脳動脈まで到達しうることをX線透視および血管造影により確認した。 2.無麻酔ラットを用いたMRSI装置用脳定位固定法の開発 無麻酔ラットをMRSI装置を用いて解析するため、金属を使用しない以下の脳定位固定法を開発した。1)ラット頭骨に、強化プラスチック性のビスとデンタルセメントを用いて、脳定位固定装置に無痛的に固定するためのキャップを取付ける。2)上記の手術回復後、ラットを無麻酔下で無痛的に、本研究で開発した強化プラスチック性特殊脳固定装置に固定する。 3.脳虚血によるサル海馬体神経細胞壊死の作製と記憶障害の予防的治療薬の検討 本研究では、1)サルの両側の外頸,内頸,総頸,および椎骨動脈の計8動脈を閉塞して13-15分間血流遮断すると、海馬体CA1領域の選択的破壊を起こすことできること、2)この方法による選択的海馬体損傷モデルでは、手順記憶は障害されないが、海馬体に特徴的な陳述記憶が障害されること、3)Ca拮抗剤の投与は、海馬体CA1領域の神経細胞壊死および記憶障害に対して予防的効果のあることが示唆された。 4.ラット海馬体損傷による記憶障害とその治療薬の検討 本研究では、1)当初ACh作動薬として開発されたT-588は、ラット海馬体錐体細胞の膜電位に対して脱分極作用を有し、海馬体CA1領域の神経細胞壊死により学習が障害されたラットに対して学習改善作用のあること、2)T-588の経口投与により、学習に重要な海馬体、頭頂葉、および扁桃体において、機能的MRIで血流増加を示唆するMRI信号強度が増強することなどが明らかになった。
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