研究概要 |
今年度は引き続き、ミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNA(nDNA)の量比の加齢に伴う変動をラットの各組織を対象に行った。測定をより正確に行うため、内部標準としてnDNAに存在する高度繰り返し配列"LINE"を用いる事とした。LINE配列のうち、制限酵素SalIとPstIで切り出される2kbpの断片に対応するプローブを合成しビオチン化した(プローブN)。ラットの種々の組織から野精製DNAをEcoRI,SalIとPstIで消化したものをサザンブロッドし、mtDNAのプローブとプローブNを同時に加えてハイブリッドさせる。このようにするとビオチン化プローブの発色の程度は、mtDNAとnDNAに対するものが同時に測定できる程度なので、この発色強度の比をmtDNA/nDNAの値とした。mtDNAプローブの方はLINEの2kbpと分離の良いEcoRIのA断片(62kbp)に対応するプローブを用いることにした。 心筋では、前年度までに24ヶ月齢で減少が認められていたが、30ヶ月齢も測定した。その結果、肝と同様に30ヶ月齢では2ヶ月齢の30%以下となっていた。また、これまでの実験は餌を60%に制限したラット群の値であったが、自由食の群と比較し、餌の効果を調べた。その結果、肝臓では制限食の場合と同様にmtDNA/nDNAの量比は加齢と共に減少した。心筋では、この比の減少は少なくなった。腎臓では逆に、制限食の時は減少せず、自由食の方は減少傾向を示した。さらに、自由食ラットの脳についてmtDNA/nDNAの量比を測定した結果では、大脳では減少が認められたが、小脳を含む部分では減少しなかった。
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