研究概要 |
研究計画(平成4年度)に基づき、自己反応性出現とT細胞レパートリーの加齢変化との関連性を調べた。 1.加齢に伴う自己反応性:加齢マウス(約1ヶ年齢)の脾細胞をX線照射により不活化した後、生後6週齢の同性、同系マウスの後足蹠に投与すると、膝窩リンパ節肥大反応に伴う同系宿主一対一移植片(HVG)反応を示すマウス系統(BALB/c,C57BL/6など)と、反応を示さない系統(NZB,DBA/2など)に分かれた。この様な系統差には遺伝的支配のあることが示唆された。そして(BALB/c x DBA/2)F1では同系HVG反応は観察されないことから、加齢変化が弱い(安定)形質が遺伝的に優性といえた。 2.T細胞レパートリーの加齢変化:加齢に伴う自己反応性が認められたBALB/cマウスに於けるT細胞リパートリーを、T細胞受容体Vβ6及びVβ8に対する抗体を用いたフローサイトメトリー法によって検討したところ、Vβ8陽性T細胞が加齢に伴い選択的に増加していた。一方、同系HVG反応で観察されなかった(BALB/c x DBA/2)F1ではT細胞レパートリーの加齢変化も観察されなかった。我々は、加齢に伴って増大する自己反応性クローンの中にVβ8陽性T細胞が含まれており、Vβ陽性T細胞クローンの増大を引き起す"自己"抗原は恐らくスーパー抗原様のもとし推測した。 3.同系HVG肥大リンパ節中のT細胞:同系HVG反応で増加しているBALB/cリンパ節中のT細胞レパートリーを調べたところ、同系HVG反応を示さない(BALB/c x DBA/2)F1や対照リンパ節中T細胞レパートリーと全く差がなかった。加齢に伴うT細胞レパートリーの変化が、自己寛容の破綻の結果でないことは、新生仔胸腺摘出によって人為的に自己免疫病を発症させてもVβ8陽性T細胞数に変化がみられなかったことから推察された。
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