研究概要 |
研究計画(平成5年度)に基づき、加齢に伴うT細胞レパートリーの変化を量・質及び機能的側面から調べ、これらの遺伝的背景と生物学的意義に検討を加えた。 1.同系宿主対移植片(Syn.GVH)反応の遺伝的要因について:加齢待ちのため、前年度からの持越になっていた種々の系統及びSyn.GVH反応系のBALB/cマウスと非反応系のDBA/2マウス間で樹立した組み替え純系(Recombinant Inbred),CXD2マウス,を用いた自己反応性出現の結果と加齢に伴うVβ8陽性T細胞の変化(これは、変化のみられるBALB/cと変化の認められないDBA/2との比較によった)の結果との間には直接の関連は認められず、これら2つの加齢変化の指標は其々異なった遺伝的支配を受けているといえる。 2.加齢に伴うT細胞の変化について:約1年齢以降のBALB/cではVβ8陽性T細胞が増加することが多い。この増加は血中に比べて脾臓に於いて顕著である。CD4/CD8比の加齢に伴う低下がCD4陽性T細胞の急速な減少による事から増加Vβ8陽性T細胞はCD8陽性と思われる。これらの細胞はT細胞受容体(TCR)の濃度が低い。一方、TCR濃度の低下は1.5ケ年齢のVβ6陽性T細胞にも認められ、加齢に伴うTCR濃度の低下は一般的傾向といえる。 3.低濃度Vβ8T細胞のin vivo機能:老齢個体に高頻度に認められる低濃度のVβ8陽性T細胞の起源については今後の問題であるが、免疫応答時に付髄的に活性化されたものが長期に亘って蓄積された集団である可能性がある。これらは果たして抗原刺激に対し、応答能があるのかを調べる目的で、Vβ8陽性T細胞を選択的に刺激するStaphylococcus Enterotoxin B(SEB)を投与したところ、Vβ8陽性T細胞が血中及び脾臓から急激に消失した。この時点で、リンパ組織ではアポトーシスによる急性細胞死を示す星状像がみられ、この様な個体はショック死に陥る。これらVβ8陽性T細胞は正常な免疫機構から逸脱したT細胞集団を形成していると思われる。
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