若齢(5週齢)、壮齢(50週齢)および老齢(100週齢)ラットを用いた本研究課題は2年間の継続研究である。したがって平成4年度の研究結果のみでは老化研究として横断的研究になるが、以下に4年度内の研究実績を示す。 1.血管内皮細胞・培養法の確立:ラット胸大動脈を摘出し、外植法にてI型コラーゲン被膜ディッシュ上に内皮細胞を分離し、継代培養を行った。この時i)ヘパリンと内皮細胞増殖因子が継代に必須であり、ii)20継代以上の培養が可能である事を見出した。 2.培養内皮細胞増殖能の加齢変化:i)^3H-チミジンの取り込み能は加齢と共に減少する事、ii)独自に開発したmigration測定法によりmigrationは加齢と共に減少する事を見出した。 3.血小板凝集能と血小板プロスタノイド産生の加齢変化:i)アラキドン酸、ADPによる凝集能は加齢と共に減少する事、ii)アラキドン酸による凝集時に血小板プロスタサイクリン(PGI_2)は増加することから血小板PGI_2synthaseの存在が示唆される事を見出した。 4.培養血管内皮細胞(EC)由来脈管作動物質の加齢変化:加齢と共にECにおけるi)PGI_2産生能は減少し、ii)エンドセリン産生能は増加したが、iii)トロンボキサン産生能は変化が認められなかった。i)-iii)の結果より、加齢と共に脈管の緊張性が亢進する事を示唆した。 5.ラット尾動脈とその培養内皮細胞におけるプリン誘導体産生能の加齢変化:尾動脈とその培養内皮細胞におけるATP、AMP、ADP、アデノシンなどのプリン誘導体の産生能とα_1-アドレナリン受容体作動薬刺激による産生能は加齢と共に減弱する事を見出した。 以上1)〜5)の結果から、本研究で開発したラット血管培養内皮細胞は、加齢に伴い発症する高血圧や動脈硬化などの血管病変の機序解明に役立つ事が明らかになった。
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