鳥の脳は成体になってもニューロンの発生が継続する。このニューロンは短寿命ニューロンと推定されているが、その生理的意義はわかっていない。本研究は短寿命ニューロンに特異的に発現するmRNAを調べることによってその意義を明らかにすることを目的としている。この短寿命ニューロンは新線条体などの部位に広く分布するが、古線条体と脳幹には分布しない。従って、新線条体と古線条体のmRNAを比較することによって(differentialハイブリダイゼーション)新線条体に特異的なmRNAを抽出し、短寿命ニューロンに特異的に発現するmRNAの候補とすることができる。本年度はこの候補となるmRNAを得ることを目的とした。 cDNAライブラリーの作製は新線条体のmRNAからcDNAをクローニングし、ファージλZAPベクターに挿入して行った。このライブラリーからプラークを形成させ、プローブとして新線条体と古線条体由来のmRNAからそれぞれ32Pで標識した一本鎖cDNAを作り、in situハイブリダイゼーションを行った。その結果、新線条体に特異的なプラーク・クローンを5つ得た。また、線条体全体からもmRNAをとり、ファージλgt10を用いてcDNAライブラリーを作製した。このライブラリーは大脳線条体全体から作製したので大量の鳥を必要としない利点があり、5羽から25μgのmRNAを抽出できた。比較対象としては、成体ではニューロン発生のない脳幹のmRNAを用いた。このcDNAライブラリーによるスクリーニングでは、約5600プラーク・クローンから12個の線条体に特異的なプラーク・クローンを得た。現在、これらの陽性クローンの中から短寿命ニューロンに特異的なmRNAを得るため、〓isto in situハイブリダイゼーションの準備を進めている。
|