研究概要 |
今年度は昨年度得られたヒトSMP30cDNAを用いて大腸菌の系を用いたヒトSMP30蛋白質の産製を行なっているが未だ精製にはいたっていないものの、この蛋白質を用いて各種モノクローナル抗体を作製し各種肝疾患、腎疾患との関連及び蛋白質の機能等の解析が可能になるものと考えられる。昨年にひきつずいて遺伝子発現制御領域解析のための基礎実験としてCAT Assayによる転写調節領域解析のために用いる培養細胞の検討をさらに行なった。ヒト肝癌細胞のHepG2、Hep3Bのほかヒト腎癌細胞のG401、VMRC、ラット肝癌細胞のHepaI、マウス肝細胞(3105)、その他腎上皮細胞のMDCK、MDBK、LLC-PK1についてSMP30の発現をNorthern hybridizationによって調べた。その結果肝臓および腎臓の正常ならびに癌化株化培養細胞におけるSMP30の発現はいずれの株化培養細胞においてもほとんど認められず著しい発現の低下を示した。しかし、ヒト肝癌細胞のHepG2およびHep3Bにおいて僅かではあるが発現が認められた。よってこれらの細胞を転写調節領域解析のために用いることができると考えられた。このため当初はラットゲノムDNAをとる予定であったがヒトゲノムに変更することになった。さらにSMP30は多くの培養細胞系において発現していないことから、逆にこれらの培養細胞系を用いて種々の薬物によるSMP30誘導の実験を組めることが明らかになった。 次にSMP30mRNAレベルでの発現の加齢変化をNorthern hybridizationにより調べた。その結果、Adult(6カ月齢)に比べ老齢(24カ月齢)で肝臓において約57%に、賢臓において約25%に減少が認められた。タンパク質レベルでの肝臓における減少は約40%であったことから、SMP30の老齢での減少は転写レベルで制御されていることが予想された。さらに賢臓においてもSMP30は老齢において著しく減少していることが明らかになった。またSMP30がPEST配列をもっていることからカルパインの基質になり得るかを調べた。精製SMP30タンパク質をmならびにuカルパインで消化してみたが、degradation産物は検出できなかった。条件の改良等、2,3の検討事項が残されてはいるものの、SMP30はカルパインによって消化されないであろうと思われた。
|