研究代表者の加藤博は、日本人研究者としては初めて、エジプトでの社会調査を許され、エジプト中央統計局(CAPMAS)と共同で、エジプト農村で世帯調査を実施した。 平成16年度には、下エジプト・デルタ地方の3ヵ村(シャルキーヤ県のアブー・タワーラ村、ザハラー村とメヌーフィーヤ県のアブー・スィネータ村)と上エジプト・デルタ地方の3ヵ村(ベニー・スエフ県のホーマ村と、ソハーグ県のアウラード・シェイフ村、カワーメル・バハリー村)で世帯調査を実施した。調査は、村ごとに、それぞれ600世帯を対象とした。調査村落は、(1)一万人を越えることのない中規模の人口であること、(2)カイロへ移民を多く送り出している低い所得水準の地域にあること、を基準に選考した。「貧困」と「地方の就業構造」を主要研究テーマとし、研究方法としてコミュニティ・スタディーズを意識したからである。また、この世帯調査と並んで、調査データに基づく空間分析が可能となるように、村ごとにブロック、家屋ごとの詳細な地図を、現地の測量技師との提携によって、作成しつつある。その結果、統計データと地理情報を接合した、これまでにないエジプト農村社会研究の準備が整いつつある。研究分担者のアリ・エルシャズリは、共同研究機関であるエジプト中央統計局との交渉のほか、地図作成、地理情報のGIS分析作業の責任者として、このプロジェクトに多大の貢献をしている。「11.研究発表」での二つの論文は、こうしたわれわれの研究協力の成果の一端である。
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