近代日本における神道形成をめぐって 一、その社会化について 近代日本における神道形成を、社会化される過程としてとらえるのが、本研究における重要な視点の一つである。十六年度の研究では、その社会化の様相を、(1)制度によって推進された部分と、(2)固有の信仰形態を持しながら、制度によって触発されさらに自ら成長を遂げた部分、という二面から探ってみた。具体的に行った研究と獲られた所見は以下である。(1)明治初年の「大教宣布」期に遡り、近代日本における「教育」及び「宗教」の発生とその原型の形成が、神道を中心とした教化運動の試行錯誤と大いに関係することを究明した、(2)そこからその後の社会に流れ込んだ「教育」及び「宗教」は独自の展開を遂げたが、その原型が持ちつづけられていて神道社会化の潜在的な要素として保持されていたこと、または戦時まで、それらの要素が神道との関係が蘇らせられ、神道との再度の結合が準備されてきたことを明らかにした、(3)さらに、その過程を神道社会化の過程としてとらえながら、その過程のなかでの政府と民衆との相実現を、明治末期の「神社整理」と大正初期の「民衆神道化」を通して考察した。 二、その戦時化について 十六年度の研究ではまだ十分に踏み込むに至らなかったが、戦時化に向かう準備をどのようにされてきたかといった下地的な研究を行った。そこで、全面戦争期に入る直前に開かれた「神社制度調査会」を取り上げ、(1)神社二元化(制度形式と民間形式の共存)にともなう問題として教派神道と神社信仰のあり方が再検討されていた、(2)戦争の勃発を機に、それらのあり方がすべて神道国教化の方向へ持ち込まれ規定された、という二点を明らかにした。
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