研究課題/領域番号 |
04F04059
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩佐 和晃 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授
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研究分担者 |
HAO Lijie 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 強相関電子系の物理 / Pr充填スクッテルダイト / 中性子散乱 / 重い電子状態 / 四重極秩序 / 金属-絶縁体転移 |
研究概要 |
三価イオンあたり複数のf電子がイオンから供給される希土類元素を含む化合物での、重い電子状態の可能性、磁性・電気多極子およびそれらの自由度を介した相転移を理解するため、イオンあたり2個の4f電子が供給される充填スクッテルダイトの物性を中性子散乱法により研究した。 ・PrFe_4P_<12>の重い電子状態から反強四重極秩序相への相転移が注目されている。反強四重極相ではFeイオンの変位による構造相転移が起こるが、これと対称性が同じPr 4f電子四重極の秩序変数を特定することを目的として偏極中性子回折実験を行った。立方晶の[100]と[011]軸方向に磁場をかけたとき、いずれもO_<20>=2J_z^2-J_x^2-J_y^2と表現できる四重極の期待値が有限であることが分かり、少なくともこれらの成分を含む秩序であることを明らかにした。 ・PrRu_4P_<12>は63K以下でRuとPの原子変位による構造変化を伴って金属から非金属的に相転移する。この相転移における4f電子の役割を非弾性中性子散乱と偏極中性子回折により調べた。高温金属相では4f電子状態はブロードな結晶場レベルとして観測された。転移温度以下では伝導電子数と原子変位の急激な温度変化のため、結晶場準位の数meVにわたる移動とスペクトル幅の先鋭化が起きた。さらに二種類の異なる結晶場準位をとるPrイオンが存在し、相転移によって現れる結晶格子変調構造と同じ周期で配列することが見いだされた。このような4f電子の結晶場状態の低温での劇的変化は、周囲のイオンを源とする伝導電子との混成によって説明できる。4f電子を持たないLaFe_4P_<12>が絶縁体転移を起こさないことを考慮すると、この混成効果が金属-非金属相転移に重要な役割を担っていと言える。 ・上記の成果を強相関電子系国際会議SCES'04(7月、ドイツ・カールスルーエ)などで発表した。
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