赤血球中のヘモグロビンはヘムとグロビン蛋白質の比が1:1で結合しており、赤血球中でヘモグロビンが正常に機能するためには、ヘム:グロビン比は1:1でなければならない。グロビン蛋白質の合成はヘムの濃度により制御されている。即ち、正常の状態では、ヘムの濃度が充分に存在しており、そのヘムは蛋白合成を制御するヘム制御eIF2aキナーゼの活性部位をブロックしている。様々な環境汚染物質によりヘム合成系が阻害される。そのような原因で赤血球中のヘムの濃度が低下すると、ヘムは活性部位から離脱し、その結果、キナーゼ活性が発現し、蛋白合成は停止する。我々は、このヘム結合とヘムによる活性制御機構を検討するために、N末端が欠損した変異体を構築し、その反応機構を詳細に検討した。その結果、(1)N末端を欠損させると6量体が3量体に変化する。(2)N末端を欠損しても活性には影響を及ぼさない。(3)ヘム結合はミオグロビンのようなヘム蛋白よりも著しく弱い。(4)ヘムの合成中間体は活性に影響を及ぼさないが、ヘムの分解物はキナーゼ活性を強く阻害した。ことなどが判明した。以上の結果より、以前から提案されているヘムによるeIF2aキナーゼの阻害の機構を再検討する必要が生じた。ヘムの分解の機能が不全である場合、赤血球中でのグロビンの合成が阻害され、その結果過剰のヘムとヘム分解物が蓄積し、活性酸素などが関わる病態が追加的に発現し病状をさらに悪化させる可能性が示唆された。 各種国際会議で発表しているが、印刷物としての発表はまだである。
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