研究概要 |
SAC-CI法は化学の様々な領域に応用され,成果を収めてきた。2003年に,SAC-CI法はGaussianプログラムに導入され,最も有用な励起状態の理論として高い評価を受けている。本研究課題では,このSAC-CI法を用いて,多電子系の理論精密スペクトロスコピーを展開する。本年度は,4π電子からなる共役系分子の励起スペクトルの詳細な帰属を行い,価電子励起状態における構造緩和について研究を行った。 ブタジエン、アクロレイン、グリオキサールは,4π電子の共役系分子であり,π-π*やn-π*の価電子励起状態がリドベルグ励起状態と混在していることから,精密な理論による帰属が期待されている。これらの分子について,十分な基底関数を用いた高精度の理論計算を行い,イオン化閾値までの一重項および三重項励起状態を計算し,価電子励起状態やリドベルグ励起状態に分類した詳細な帰属を行った。また,これらの分子のπ-π*やn-π*の励起状態における構造緩和を、SAC-CIの解析的エネルギー勾配法を用いて研究した。ブタジエンについては6つの励起状態,アクロレインとグリオキサールはそれぞれ4状態について構造を決定した。理論による断熱励起エネルギーや励起状態の分子構造は,実験が報告されているものについては実験値をよく再現し,その他の状態については,励起状態の性質を反映した結果であり,信頼性の高い予測を行うことができた。
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