研究課題
一部はセメント製造に利用されているが、そのほとんどが海岸に捨てられている牡蠣殻の処理・再利用を目標に研究を行っている。前年度までに廃牡蠣殻の脱石灰中に殻中から溶出するタンパク質が固化反応の活性剤となっていることを見出し報告していた。今年度は、タンパク質の性質、また溶出タンパク質を用いて作製した固化体に対する評価を中心に研究を行った。牡蠣殻粉末は、ボールミルを用いて調製した。粉末の加圧成形についての研究は、既に成功を収めている。元の試料も加圧成形体の比表面積もほぼ11m^2/gで同程度だった。抽出タンパク質としては、出発牡蠣殻を10%酢酸で脱石灰する際に溶出したものを用いた。水に可溶性・不溶性のタンパク質の両方について、空気中で昇温速度10℃/minで熱処理すると、主に7種類のタンパク質が溶出していることが明らかになった。可溶性タンパク質は300℃以上で分解するものを含んでいたが、不溶性タンパク質は炭酸カルシウムが分解する温度でも確認された。しかしながら、水熱ホットプレス条件下では可溶性・不溶性のタンパク共に安定であった。前年度に報告した内容から、廃牡蠣殻から抽出したタンパク質を添加すると、水熱ホットプレスによる粉末固化は促進される。抽出タンパク質によって活性化された牡蠣殻粉末を30MPa、50-300℃の条件下で水熱ホットプレスして固化体を作製した。その結果、200℃、30MPa、で2時間水熱ホットプレスして得た固化体の密度は、初期牡蠣殻の密度以上であった。得られた機能性物質の圧縮強度測定を行ったところ、大理石の2倍以上である200MPa以上の圧縮強度を持っていることが明らかになった。廃牡蠣殻を粉末化してその抽出タンパク質存在下で水熱ホットプレスを行うことにより、建材や表面仕上げ材質として充分な特性を持っている固化体が作製できることが分かった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal Functional Materials (accepted for publication)
Proceedings of the International Conference "Functional Materials", Ukraine, Crimea, Partenit
ページ: 342