地球上で最も豊富に存在する天然有機高分子であるセルロースから、分子は良好に配向しているが非結晶性であるネマティック配向セルロース(NOC)という構造を形成させることに研究代表者近藤らは成功した。その表面は極めてユニークな性質を示し、その上で、セルロースの分子配向方向に他の物質を配列させる働きをもつ。さらに最近、体外に高分子繊維を生産・分泌する生物体(微生物、細胞、カビ)などの培養用テンプレートとして用いると、分泌された繊維はNOC上に配列することを見出した。そこで、このコンセプトを発展させ、NOC表面上でのセルロース分子と無機または金属化合物の相互作用から、ユニークな配列パターンを表面にもつ無機ならびに金属化合物・セルロースナノコンポジットの創出をめざしている。 本年度は、無機物として筒状構造を有するイモゴライトを用いた。その懸濁液を上読のNOC配向表面上で展開することによって、どのようにイモゴライト分子が堆積するかを検討した結果、NOC表面により分子配向の誘発が促進されることが明らかとなった。現在、さらにユニークな表面特性を有するこの配向イモゴライト表面上で、セルロースナノ繊維を菌体外に分泌する微生物である酢酸菌がどのように繊維を分泌するかを検討している。最終的には、その分泌繊維が配向しながら堆積するような培養法を提案する予定である。
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