研究概要 |
バクテリアセルロースにCa_<10>(PO_4)_6(OH)_2.骨や歯などの硬組織を構成するアパタイト(結晶構造物).を形成させる条件について詳細に検討した。大きく分けて2つの方法を用いてアパタイトを形成させることができた。一つはpH7.4、30℃という生理的な条件で、ヒトの体液のほぼ1.5倍のイオン濃度を有する溶液(1.5 SBF:simulated body fluid)に数日から数週間浸ける方法で、もう一つの方法は適当な濃度のカルシウム溶液とリン酸溶液を混合する方法である。特に前者については、全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)ならびに誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で基質であるセルロースと形成されるアパタイトについて検討した。その結果、アパタイトの形成過程において,初期にセルロース表面に結晶化するamorphous calcium phosphate(ACP)あるいはoctacalcium phosphate(OCP)存在が示唆された。また堆積物の形態を走査型電子顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡により調べたところ、薄い平板状の構造体が会合する結果1から3マイクロメートルの半球状の析出物となることが分かった。2,2',6,6'-teramethylpiperidine N-oxyl(TEMPO)処理により、セルロース表面の6位の水酸基をカルボキシル基と替えた場合は、アパタイトの核形成を促進させることが分かった。その場合、セルロース表面の至る所に核形成の拠点ができ、さらに結晶化速度が速いために、サイズの小振りなアパタイトが形成されることが分かり、セルロースのTEMPO処理を適度に行うことによって、形状や形成速度を制御出来ることが見いだされた。
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