昨年度は、数種のテトロドトキシン(TTX)産生細菌を対象に、培養条件について若干の検討を加え、いずれも低塩分(1%以下)、低pH(5〜6)、高温度(25〜28℃)で比較的安定したTTX産生を示すこと、培養液に有毒コモンフグ、あるいは無毒養殖トラフグの組織片(腸管、肝臓、卵巣等)を添加して培養すると、培地1ml当たり最高4.8MUに達するTTX量の顕著な増加が認められる場合もあること、などを明らかにした。本年度も引き続き、培地への組織片添加実験を行ってきたが、十分なデータが得られる前に、研究分担者の外国人特別研究員採用期間が終了した。現在、研究分担者は、母国において実験を継続するとともに、日本で得たデータのとりまとめとその解析を実施中である。 一方、腸内細菌がTTXを産生することが知られているTTX保有生物の一種、カブトガニCarcinoscorpius rotundicaudaのカンボジア産個体について、TTX産生菌の分離に先立ち、毒性と毒組成を調査した。その結果、供試した20個体は、乾期/雨期にかかわらず、いずれも有毒で、最高毒性値は315MU/gに達した。高毒性の1個体は、肝膵臓と卵の毒性が高かったが、他の個体では、部位による毒性の差は比較的少なかった。LC/MS分析により、毒の主成分はTTXと同定された。
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