研究概要 |
中国黄土高原下流域における塩類集積の防止と回復のため,洛恵渠灌区地域を対象として実施した。洛恵渠灌区は温帯大陸性半乾燥気候区に属している。年平均気温は13.3℃,年平均可能最大蒸発量(1689.3mm)は年平均降雨量(513.6mm)の約3.3倍である。灌漑は本地域の安定的な農業生産に不可欠である。灌漑水源は洛恵渠からの水と地下水である。洛恵渠からの水のEC, pH及びSARはそれぞれ1.42dS/m,7.7,9.7である。灌区地下水の平均ECは3.17dS/m,平均pHは7.9である。SARは3.7〜28.9の間に分布している。FAOの分類標準によると,洛恵渠からの水は良質灌漑水に属する。灌区において半分以上(55.8%)の井戸が灌漑に不適切で,また,飲用可能な井戸はほとんど存在しない。劣質地下水を用いた灌漑は本地域土壌塩類化の一つの原因である。灌漑を実行する際に,劣質地下水の使用を注意しなければならない。 灌区の地下水位は降雨や黄河,渭河,洛河などの影響および灌漑や排水などの制約により,変化している。地下水位の深いところは地表面下30-50m,浅いところは1-2mである。ところによっては,地下水位が表面に達する場合もある。特に,洛恵渠の灌漑開始後,効率の低い地表灌漑の適用,排水システムの不備および乾燥、少雨の気候環境により,地下水位の上昇が顕著となり,二次的塩類集積が生じた。灌漑においては,地下水位と土壌塩類化程度及び塩類集積の特徴を総合的に考えて,灌漑を行うとともに,排水施設の完備,排水地域の汚染を防止するため,排水処理も考慮しなければならない。灌漑を実施する際には,排水システムの適正な管理の外,農地の均平化,計画的用水補給の強化,灌漑技術の向上,用水路の浸透防止などにより,灌漑水の利用効率を向上させ,灌漑コストを下げることも農業生産効率の向上及び土壌劣化の防止と回復に非常に重要である。
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