すでに発表したクロルプロマジンを用いた口腔内へのCandida接種で作製したマウス口腔カンジダ症モデルの他に、抗炎症ステロイド吸入剤(ベコタイドまたはキュバール)を用いた口腔・咽頭カンジダ症モデルを作製した。このモデルでは、マウス咽頭部にCandidaを塗布接種しそこにステロイド吸入剤を噴霧することで、3日後には軟口蓋にもCandida性白苔を生じる。組織学的には、その白苔の深部に炎症性細胞の浸潤がおこり、表皮の肥厚が認められた。その肥厚は、基底層での分裂中の細胞の増加と一致していた。(論文作成中)これらのモデルに関連して、白血球の動態を形態学的に調べると共に、マーカー酵素のミエロパーオキシダーゼ量の変化を測定し炎症の指標とできることを明らかにした。また、このモデルで、フルコナゾールを経口投与すると、発症がおさえられることから、化学療法剤の治療効果を測定できる感染モデルであることがわかった。すなわち、喘息など治療に用いられる抗炎症ステロイド吸入剤の使用による副作用を解析し、問題を解決するための咽頭カンジダ症のモデルを作ったといえよう。さらに、様々な天然物を用いて感染防御能の増強を試みた結果、漢方補剤十全大補湯および黄連解毒湯の経口投与が、このマウスカンジダ症の治療に有効であることがわかった。黄連解毒湯には、抗菌活性を有するフラボノイドが多く含まれるのに対して十全大補湯には、試験管内で抗菌活性を示すものが検出できなかった。十全大補湯が、宿主の食細胞の活性を増強することは、すでに見いだしており、その作用が治療効果に直接かかわるか否か、現在検討中である。
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