感染症のコントロールは日本および中国の医学・医療において重要な社会的要請の一つである。細菌・ウイルスが感染すると宿主はこれを排除するために感染抵抗性を示す免疫細胞群を誘導し、これは同時にアレルギーに関与する細胞群の誘導を抑制する。したがって、宿主の本来持っているこの機能・機序を明らかにすることが、感染症やアレルギーに対する治療法を考えるうえで極めて重要であると考える。そこで、細菌感染により免疫系が感染抵抗性あるいは抗アレルギー状態になることに着目し、宿主にこのような免疫応答を誘導する細菌遺伝子を同定することから、この問題を解決することを考えた。病原体感染に引き続き、宿主の免疫応答は、感染抗原提示細胞の影響を強く受け、免疫応答が強くTh1優位に偏倚する。そこで、感染初期に宿主にどのような遺伝子発現が生じるかを検討した。腹腔マクロファージにリステリア菌を感染し解析した結果、病原体の表面構造に対するレセプター(TLR)を介するシグナルにより発現する感染初期活性化遺伝子群と、感染に伴い感染細胞から分泌される分子により二次的に活性化される遺伝子群とが認められた。後者の遺伝子群は、リステリア菌が細胞に感染後、細胞質内に移動することにより、何らかの機序により活性化され、TLRを介するシグナルとは異なるシグナルにより誘導される分子により、パラクラインあるいはオートクライン機序により誘導されることが示唆された。
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