研究概要 |
現在、肝不全患者に対する確立された根治療法は肝移植のみであり、自己骨髄幹細胞や臍帯血幹細胞を用いた肝再生医療の開発が期待される。しかし骨髄や臍帯血幹細胞がどのように肝細胞へ分化するのか、また分化するために必要な微小環境"niche"はどのようなものか、など不明な点が多い。本研究では骨髄幹細胞が肝細胞へ分化する制御機構、および分化に必要な"niche"を解明することを目的とする。同時にHGF,SDF-1 (stromal cell-derived factor-1)投与有無の各群を用いて、移植されたマウスの肝臓におけるGFP陽性細胞の分化過程を経時的に検討し、肝細胞への分化における制御機構と"niche"でのMMP,HGF,SDF-1の意義について検討する。これらの研究の成果は、将来的に自己骨髄細胞をex vivoの条件として"niche"に準じた微小環境条件に類似させることが可能となり、肝不全に対する有効な細胞移植療法を開発しえる。 1)SDF-1の機能解析(in vitroにおけるchemoattractant活性の確認) マウスCD34陽性幹細胞における遊走能をmigration assayで検討した結果SDF-1は対照に比し約5倍の細胞に遊走させることが確認された。また遊走した細胞に肝細胞分化Markerの発現率が高いことをPCRで確認した。 2)SDF-1の病態発現(in vivoにおけるchemoattractant活性の確認) CC14投与肝障害モデルでは肝内にSDF-1の発現が検出され、SDF-1発現量は肝臓傷害の程度に相関した。それに対し、肝内骨髄由来GFP陽性細胞数も傷害の程度に相関した。傷害肝モデルにおけるHGF投与結果、GFP陽性細胞数がもっと多く、その一部が肝細胞転写因子HNF4陽性細胞に分化した。
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