研究概要 |
目的;骨髄細胞が肝細胞に分化する過程におけるMMP9の重要性を検討する。方法;MMP-9 KOマウス(♀)をhostとして、GFP-TGマウス(♂)の骨髄細胞を移植し、肝細胞への分化過程を形態的に検討し、MMP9とSDF-1、CXCR-4の関連を検討する。結果;肝臓におけるSDF-1の発現は急性四塩化炭素障害と放射線照射を併用すると強く誘導されることが確認され、放射線照射後に四塩化炭素障害を引き起こす実験モデルで骨髄移植を行った。骨髄細胞中のCXCR-4陽性細胞数Lin+細胞では5.7%であるのに対しLin-細胞で41.1%であり、本実験ではLin-細胞を分画して移植を行った。移植されたhostの肝臓内の単核球を解析すると、CXCR4+細胞数は対照群;25%、MMP9 KOマウス;10%, MMP inhibitor投与群;20%であった。また移植された肝臓内GFP+細胞数は対照群;4.8%, MMP9 KOマウス;2%, MMP inhibitor投与群;2.5%であった。肝臓内でのGFP,Y染色体Sryの発現も同様であった。次に骨髄細胞のin vitroの結果では骨髄細胞はSDF-1によって細胞遊走能が著明に促進されるがMMP inhibitor添加で完全に抑制された。またSDF-1添加で骨髄細胞はMMP-9の発現が誘導され、一方MMP-9添加で骨髄細胞はCXCR-4の発現が増強した。結論;SDF-1は骨髄細胞のMMP-9の発現を誘導し、CXCR-4発現増強を介して肝臓へのrecruitmentを誘導すると考えられた。これらの結果は骨髄細胞がnicheからの遊離とともに障害部位へのrecuruitmentにMMP-9が重要であると推察される。
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