研究概要 |
本年度は、Sun博士が11月22日に来日してから3ヶ月半の間に、以下の事を行った。先ず、Sun博士が、持参した合計900を超える中国西方砂漠表層試料および黄土高原レス-古土壌試料の採取地点、採取層準のリストを作成し、そのリストを元にこれから2年間での研究計画を議論した。その結果、先ず、偏西風や冬季モンスーン風により日本や北太平洋域に運搬される風成塵の供給源と考えられている中国西方砂漠、中北部ゴビ地域、東北部乾燥地域の表層試料についてその特徴を把握し、記述する事が、風成塵の起源を推定する上で重要であり、合わせて、黄土高原のレス-古土壌堆積物試料について、氷期-間氷期や、第三紀末から第四紀を通じての風成塵供給源変化が認められるかどうかの見通しを立てる事も重要であるとの結論に達した。 本研究室では既に、風成塵中の石英について、その起源を特徴づけるパラメーターとして電子スピン共鳴(ESR)信号強度と結晶度を組み合わせて用いる方法を考案している。また、風成塵の運搬過程の違いが、しばしばその粒度に反映される事も、既に知られている。そこで、Sun博士が持参した表層試料のうちから、代表的な試料を選び出し、,粒度分画を行った上で、個々の粒度分画フラクションについて、予察的にESR信号強度測定および結晶度測定を行っている。現時点では、その結果の一部しか出ていないが、1)供給源地域により、また、粒度により、石英のESR信号強度および結晶度に違いが見られる事、2)そうした特徴を用いれば、風成塵の供給源が、ある程度特定できそうな事、3)黄土高原のレス-古土壌堆積物においては、細粒フラクションと粗粒フラクションとで、ESR信号強度が大きく異なり、更に、氷期-間氷期サイクルに伴った変化が、両フラクションともに見られそうである事が解ってきた。
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