研究概要 |
本研究は,シリコンマイクロマシニング技術によって製作したフィールドエミッション(電荷放出)型の電子銃を,高周波通信用(2GHz程度)のバンドパスフィルタなどへ応用するものである.すなわち,電界放出電流電極の近傍(1μm以下)に,マイクロマシニングによるナノ振動子を配置し,その振動が電界放出電流に及ぼす影響をみることによって,非常に微小な(ナノメートル以下の)振動を検出する.さらに,振動子の共振周波数をGHz帯に設計することにより,高周波数のバンドパスフィルタとして用いることを検討している.これまでに,貼り合わせSOI基板を高アスペクト比ドライエッチングとシリコン異方性ウェットエッチングの組み合わせにより,先端半径が数十ナノメートル,電極間隔数ミクロンの対向電極を形成した.このデバイスを超高真空(10E-8 Torr)チャンバに入れて,電極間に数十〜100Vの電圧を印加したときの電界放出電流を実験的に観測した.また,この電流が電界放出に由来するものであることを,FNプロットにより確認した.さらに,電子弾道の近傍に設置する機械的ナノ振動子の共振周波数について有限要素法等の開発ツールを用いて設計を行い,数百kHzから数MHzの範囲における設計手法を確立した.数MHz以上の共振周波数に関しては,製作プロセスをフォトリソグラフィーから電子ビーム描画装置を用いる方法に変更する必要がある.
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