研究概要 |
本研究の目的は,シリコンマイクロマシニング技術によって高速で振動する微小な機械的振動子を製作し,その振動を真空電界放出現象の電子によって検出する方法を確立することにある.また,研究の応用先として,高周波無線通信用の高Q値周波数フィルタを想定している。 2005年度は,電界放出現象を安定して測定するための機械振動子として,様々な形式のデバイスを設計,製作した。特に,電界放出電極の先端半径を数十nm以下に小さくし,かつ,電極全体を機械的に振動するためのマイクロアクチュエータ機構を集積化した.電界放出電流が電気機械的に変調されている様子を簡単に計測するために,アクチュエータの共振周波数を1kHz程度に低く抑えたものを用意した。これにより,電極間距離(数百nm)に比べて,ギャップ変調距離を1μm程度と余裕を持たせることができた。一方,より高速の現象を計測するために,共振周波数が100kHz程度のデバイスも併せて試作した. また,試作に用いたSOI基板の膜厚構成を見直して,より安定してマイクロアクチュエータ機構が製作できるような工夫を各種行っている。これにより,本研究の以前の方法に比べて,より低電圧で駆動できるようになった(駆動電圧150Vにより変位1μm程度を発生)。 研究計画最終年度の今年には,シリコン電極の表面に仕事関数の小さな金属材料を被覆して電界放出電流を増大させ,最終的にマイクロ・ナノメカによって電流が変調を受ける様子を実験的に検証する。
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