研究課題
本研究の目的は、地震のたびに多数の死傷者を出し続けているイランの耐震性の低い既存の組積造建物を、現地で対応可能な技術と入手可能な材料を用いて、しかも安く耐震補強できる手法を開発するとともに、そのような技術を用いた耐震補強を広く普及させる制度的システムの提案である。本年度はAEM(Applied Element Method:応用要素法)を用いた組積造の破壊挙動シミュレータの開発するための、要素試験と基礎的な振動台実験を行った。これらの実験はわが国で入手可能な材料の中で比較的イランの組積材料に近いレンガやアドベを用いた実験である。この実験には東京大学生産技術研究所が所有する電子制御の高精度3次元振動台施設を利用した。外力の再現性が高い振動台を用いることで、AEMを用いた組積造の破壊シミュレータのキャリブレーションと、異なった補強法による耐震性向上の違いが定量的に議論できる。次にこれらの実験結果に基づいて、提案する補強法の効果を、現地(イラン)の構造物に対して確認する研究を開始した。すなわち、提案する補強法を現地の材料を用いた実大組積造建物に導入し、これを用いた破壊実験を実施(別予算で実施予定、平成17年度は異なる補強法を施した典型的な2例の組積造の破壊実験)し、効果の定量的な評価を行った。そしてこれらの実験結果を基に、先に作成したAEMシミュレータで、現地の組積造の破壊挙動が高精度にシミュレーションできるような改良を開始した。以上は、技術的な側面からの検討であるが、一方で、地震のたびに多くの死傷者を出し続けている組積造を中心とする耐震性の低い建物がイランで減らず、補強されないままに多数使われている理由は社会的環境も原因となっている。そこで本年度は、この問題に関する社会的な側面からの調査も開始した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Proceedings of the Third International Symposium on New Technologies for Urban Safety of Mega Cities in Asia
ページ: 231-240
ページ: 9-18