本年度はブシネスク系の初期値問題を中心に、関連する調和解析学上の問題と非線型偏微分方程式の問題を研究した。 まず、p乗冪の自己相互作用を持った一般化ブシネスク方程式の小振幅解の時間大域的存在について、従来の条件p>8を新しい条件p>9/2に大幅に改良する事が出来た。同時に、非自明な漸近自由解の非存在をp【less than or equal】2の場合に証明した。存在と非存在の間には9/2から2までのギャップが横たわっており、非線型シュレディンガー方程式やKdV方程式の研究からの類推によれば、p=3が最終的な分岐点であろうと予想されるが、最終的な解決にはもう少し時間が必要となるだろう。 次に、p乗冪の自己相互作用下での一般化ブシネスク方程式と改良ブシネスク方程式を一般空間次元nで考えた場合、nとpとの関係について小振幅大域解の長時間的挙動の立場から比較して論じた。主な視点は、対応する線型偏微分作用素の成す特性多様体の幾何学的特性が、基本解の長時間挙動に及ぼす影響を精密に評価する点にある。その際、重要になるのが停留位相の方法に代表される、振動積分の調和解析的取扱いであり、一般化ブシネスクと改良ブシネスクの幾何が解析にどの様に反映するのか、調和解析的枠組から統一的に解釈する方法を明らかにする事が出来た。また、改良ブシネスクとシュレディンガーの相互作用系について、解の大域的存在と爆発条件を、空間4次元以下で詳細な結果を導く事が出来た。その際、オイラー方程式やナビエ・ストークス方程式の方法論を参考にしたが、その分野の手法を分散系に導入するための一般論が或る程度確立されたと考えられる。
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