研究概要 |
今年度は、カラー超伝導におけるギャップレス相について集中的に研究をすすめた。カラー超伝導体は、中性子星中心核やクォーク星のような高密度状況において出現が予想されている新しい超伝導相である。2フレーバーを考えた場合、フェルミ面を構成するのはu-クォークとd-クォークで、超伝導に寄与するクーパー対は、フェルミ面近傍にあるu-d対となる。この超伝導は、相対論的に運動するクォーク間のカラー反対称チャンネルに働く磁気的グルーオン引力を直接反映して誘起されるので、超伝導-常伝導相転移の相転移温度がフェルミエネルギーの10%に達する高温超伝導体である。中性子星内部のようなu,dのみならずβ平衡条件を通じて、電子が現れて、系全体としての電気的中性条件を満足する。このため、uとdのフェルミエネルギーに差が生じ、超伝導対の形成にも影響を与える。我々は、このフェルミエネルギー差が超伝導ギャップに比べて大きい場合には、ギャップレス相と呼ばれる新しい相が出現することを示した。そこでは、クォークのギャップが特定のフェルミ運動量においてゼロになり、ゼロエネルギーのフェルミオン励起が可能になる。このような相は、カラー超伝導体のニュートリノ放出による冷却を早める等の効果があり、中性子星やクォーク星の履歴に影響を及ぼす可能性がある。 我々は、さらにこのギャップレス相の性質を詳しく調べる目的で、そこでのグルーオンのマイスナー質量の計算を行った。その結果、特定のカラーチャンネルでのマイスナー質量が純虚になることを見出した。このことは、ギャップレス相が、なんらかの不安定性を内在していることを示唆している。この不安定性は、他の様々なチャンネルの相関関数にも現れることも今年度の研究の結果わかりつつある。
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