セリウムやウラン化合物などのいわゆる重い電子系物質における物性研究が世界的に注目を浴びている。高圧下の磁性研究および超伝導研究においては、従来の電気抵抗測定から得られる情報には限りがあり、精密な実験とその実験結果の解析のために、比熱測定の他、多種な実験手法の開発と実施が必要であった。 今年度までに圧力下での交流熱量測定のテクニックを導入してその開発に成功した。10万気圧を超える高圧力下における比熱測定のために、(1)専用のダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いること、(2)スポットウエルドによって取り付けた微細電極をヒーターとして用いることとした。年度前半は直径25mmのDACを設計・作成し、30万気圧までの加圧と電気抵抗測定を可能にした。圧力媒体にはヘリウムを用いる予定であったが、10万気圧以上の高圧発生に実績のあるNaClを用いた。試料に与える熱は、ロックインアンプの出力によって発生させた。年度後半には適切なカットオフ周波数の選択と測定が可能なプログラムを作成し実験効率も向上させた。 開発した高圧力下比熱測定技術を用いて、スクッテルダイト化合物PrRu_4P_<12>の金属-絶縁体転移に伴う比熱異常を観測することによって転移温度の圧力依存性の測定に成功した。今後、希土類化合物を中心とした強相関電子系物質、あるいは純鉄やコバルトなどの磁性元素に適用させることが出来る。 研究開発事項と関連した研究成果について、オーストリア国ウイーン市において開催されたる国際会議「強相関電子系国際会議」(International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2005)において招待講演を行った。
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