研究概要 |
今年度の成果を以下に示す。 1)高精度狭帯域相関処理方法の研究:SELENEのRstarとVstarの2つの子衛星を電波望遠鏡の同一ビームで観測する相対VLBIにおいて2πの不確定の除去法を新しく提案し,全観測時間帯において位相を接続する多周波相対VLBIの実現方法を研究した。本研究により,同一ビーム観測の場合,相関位相揺らぎの要因である受信機の不安定性,電離層,大気,送受信アンテナの位相特性の影響と補正方法を明らかにし、位相遅延時間の推定精度は3.3ピコ秒可能であり,衛星の相対位置を20cmの精度で決定できることが分かった。本研究成果に関する論文は電子情報通信学会論文誌に掲載された。 2)水沢10m、20m電波望遠鏡の位相特性の計測:人工電波源と静止衛星からの電波を用いて、水沢10m、20m電波望遠鏡の位相特性の精密計測を行い、主ビームの位相特性が平坦であることを確認し、同一ビームVLBIの有効性を確実した。 3)ドップラー技術と大気位相揺らぎの研究:Rstarに搭載する平面アンテナの位相特性を測定し、アンテナの位相特性と衛星のスピンのドプラー計測への影響を解明し、Kaisert窓関数を使った直線位相低域通過フィルターを開発し、その影響を除去することができた。この研究によりドプラーの測定誤差を0.2mm/sまで低減できることが分かった。また、VLBIの精度に大きな影響を与える大気位相揺らぎの性質と補正方法も考案した。これらの研究成果はIEEEに掲載された。 4)国際、国内VLBI観測実験:ウルムチ,上海,Hobart,水沢局の国際VLBI観測実験により,開発したVLBI観測システムと相関処理ソフトが予定の性能を有することを確認した。水沢、石垣島、父島、入来のVERA4局にSELENEの観測装置を配置し、衛星を円滑に追尾するソフトの性能を確認した。また、VERA4局を用いてQuasarの観測実験も行った。これらの実験から、VERA4局と開発した装置、ソフトはSELENEのVLBI観測に有効であることを確認し、打ち上げ後の観測の準備を整えた。
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