研究概要 |
高いスピン偏極度を持ちスピントロニクス応用が期待されるハーフメタル物質は、現時点ではホイスラー合金類と4種の酸化物が知られているのみである。そこで本研究では、新規ハーフメタル酸化物の探索研究をおこない、同時にハーフメタル電子構造の発現に強く関わるパラメータを探究することを目的とする。本年度の主な研究成果を以下に列挙する。 ・Feを含むスピネル化合物群において、新規ハーフメタル材料の探索を行った。本研究では、これまであまり報告例の多くないInFeMO4(M=Co,Ni,Ni,Cu,etc.)に注目し、高品質試料の作製とそのキャラクタリゼーションを行ったところ、次のような知見を得た。(i)M元素の種類に応じてスピネル相もしくは菱面体相が安定化される(ii)M=Coの物質は強磁性の絶縁体であり、半導体的挙動を示すと報告している過去の文献と一致しない(iii)^<57>Feメスバウアー分光の結果、M=Coにおいてハーフメタル発現の鍵を握ると考えられる混合原子価状態の弱い成分を確認した。 ・ハーフメタルの発現が期待される層状Fe酸化物の合成とキャラクタリゼーションを行った。その結果、Ruddlesden-Popper相の一種であるSr_3Fe_2O_<7-δ>が大気中の水分とトポタクティック反応を起こし、結晶構造中に水分子を含む誘導体に転換することを見出した。それとは対照的に、類似物質であるSr_2Y_<0.5>Ca_<0.5>(Fe_<1-x>Co_x)_2O_<7-δ>は水との反応性を持たないことが判明し、現在、含水誘導体の生成を支配するパラメータを明らかにするべく研究を続けている。
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